狗飼恭子
「恋をするのに必要なもの」2006年12月1日
恋愛、とくに恋愛初期においてアルコールはかかせないものであり、いや、かかせる人もいるのであろうが、とりあえずわたしにとってはかかせないのである。
「酔っているから」って免罪符がなければ、好意を持っている殿方に甘えたり可愛い顔をみせたりなぞ、恥ずかしくてとてもできない。
「お酒飲んでるときは面白いよね」
と、男の人に言われたことがある。
ちょっとショックだった。「は」ってところが。しかしそれくらい、お酒の有り無しで人格は変わりうるということだ。わたしだけかも知れないが。
グラス半分飲むだけで、心を開くのが簡単になる。話も上手くユーモアに溢れ、なんとなくいつもより可愛くなれたような気さえする。その場にいる人を誰かれ構わず「愛している」と言いながら抱きしめたいような気分に駆られたときは、飲みすぎの場合。
かつて、「お酒がまったく飲めない」という男の人を好きになったことがあった。
無論上手くいかなかった。
彼の前のわたしは、話下手でユーモアもなく、なんとも可愛くない女の子でしかいられなかった。
「お酒がべらぼうに強い」という男の人を好きになったこともあった。
やっぱり上手くいかなかった。
彼に合わせて飲もうとするから、可愛い酔っ払いなどあっという間に駆け抜け通り過ぎ、無様なトラと成り果てた。
大人になった今思うのは、同じペースでお酒を飲める人と一緒にいたいなあ、ということだ。お互い違う飲み物を飲んでいたとしても、グラスの空くペースが近しい人とは、他のよしなしごとのペースも同じなのではないかと思う。
だから好きになりそうな人とは、まず二人でお酒を飲む。
アルコールでさえあればなんだって良いけれど、ちょっと綺麗なグラスに入った粋な飲み物だったりしたなら、きっとそれは媚薬になる。